キャリア対策
この項は、MBAに入学されて、就職を探される方に対し、参考となる情報を提供する目的で書かれています。就職を希望する日本人私費留学生にとって、 Tepperでの大変忙しい勉強生活をやりくりしながら、いかに効率的に就職活動をすすめていくか、ということは大きな関心事であると思います。
私費、企業派遣問わず、将来のCareer Path は自分で作っていかなければいけないのは同じだといえるでしょう。その意味では、MBAによってどのようなOptionが開かれ、それに対してどのような Approachをするかということは全てのMBA学生にとってひとつの重要な課題であるのではないでしょうか?日本からのMBA留学生は、慣れない環境 に加えて、情報が少ないところで戸惑うことも多いと思いますので、この項を参考にしていただければ幸いです。
1. MBA 就職活動の位置付け
MBAの就職活動は、予想以上に早く始まります。入学して授業が始まって間もなく、宿題の山と格闘する中、9月頃からresumeの作成、 Interview の準備を開始しなくてはならず、時間との戦いとなります。アメリカでのMBAの位置付けは、Management Position へのStep Up、Career Changeとしての就職予備校的な面もありMBAの2年間は就職探しの2年間といっても過言ではないでしょう。学生は授業と同程度の意気込みを入れて取 り組みます。自分の将来進みたい方向、目標に向かって入念な計画を立てることが大切でしょう。
2. COC(Career Opportunities Center)
COCはカーネギーメロン大学ビジネススクール就職課のことです。日本の大学の就職課とは非常に異なり、アメリカの就職課の仕事は多岐にわたり、企業との Contact, TepperのMarketing活動そして特に学生のリクルーティング活動全般の支援を行います。学内で行われる各種 Work Shop(Resumeの書き方、Interviewの受け方、Networkingについて)はInternational StudentsにとってはアメリカのSystemを知るという点で非常に為になります。TepperのCOCは非常に熱心で学生からの評判は非常に高いです。但し、 USでの就職を希望する学生向けの活動が主になるので、日本での就職を希望する学生は別のルートでの活動を色々と行う必要があります。 (それに関しては別項にて詳しく説明致します。)
3. 年間Schedule
年間就職活動のScheduleは以下の表のようになります。アメリカでの就職と日系企業への就職活動は少し時期がずれ、日系企業は大分早い時期に就職活動が始まるので日本人にとっては大変厳しいScheduleとなります。
就職活動年間 Schedule
4. Corporate Presentation
TepperでのCorporate Presentation は主にU.S.での就職を希望する学生向けに開催されます。U.S.での就職を希望する日本人私費留学生は積極的にCorporate Presentationに参加し、USにおける様々な業界、及び企業に関する理解を深める必要があります。 日本で掲示板を見て、会社説明会に参加する感覚とは大分異なります。
企業説明会は9月第一週目から始まり、少ない日で1社、多い日には3社、朝、昼、夕方の授業の空き時間を使って行われます。学生にとっては、いままでまっ たく知らなかった業界、企業の話を聞けるいい機会であり、興味を持った学生は、Presentationの後も熱心に話を聞きに行き、Recruiter の方とのNetworkingを深めていきます。
CMUの特色はそのまま就職に反映します。CMUに訪問する企業は、CMUの学生の質に関しても十分熟知しており、就職先もCMUの強い分野でのPositionが多いようです。企業とPositionの特色には以下のような点が挙げられます。
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Finance / Operations / IT Consulting 系Positionが特に多い。
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大学の特徴を生かして、解析力が要求されるようなPositionが多い。
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Tepperでは30%程度がInternational Studentsであるが、米国内での勤務にはWorking Visaが必要となるため、Visaを取得する必要がある場合はその申請をサポートしてくれる企業へ応募しなければならない。
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純Brand Marketing Management のような職は少ない。
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Pittsburgh 地元の大企業、Start Up の会社がRecruitingにくる。(注Pittsburghは、Silicon Valley とまでいかな いまでも、Technology Start Upの会社が多いので有名です。)
5. RESUME BOOK
8月の末に入学してすぐに始めなくてはいけないのがレジュメ(英語版履歴書)作りです。レジュメがすべての就職活動の基本になります。アメリカまで訪問に 来てくれる日本企業へのインタビューの申し込みも、レジュメをe-mailで企業宛に送付することから始まります。日本の企業によっては、日 本語の履歴書の提出を要求してくるところもありますが、大抵は 英語のレジュメの提出でOKです。
ボストンやロサンゼルスなどで開催される各種キャリアフェアへ出席する際にも、レジュメの持参が必要となります。またビジネススクール就職課(COC)で、レ ジュメブックを作成し、11月頃に各企業宛に配りますので、そこにレジュメを載せることは、就職先を探す学生にとって必須のことです。
各企業はレジュメブックを見て興味のある学生に接触をしてきますので、レジュメブックに効果的なレジュメを載せることができるかどうかは、就職活動を大き く二分します。日本人は特にUSのResumeの書き方になれていず、ある程度の労力と時間が必要になります。日本で受験用に用意したResumeは、も う一度一から書き直す必要があるでしょう。
さて、実際のレジュメの作成に関してですが、入学してすぐにCOC主催のレジュメ作成のワークショップがあります。1学 年上の人達の各種レジュメの紹介とともに、いかにして企業にアピールするレジュメを作成するか、ということを学びます。 このワークショップをもとに、自分なりのレジュメを作成し、COCのスタッフ及び、COCが紹介してくれるアラムナイの方に自分のレジュメのレビューをしても らいます。アラムナイの方は、実際に毎年、数多くのレジュメを企業の採用担当として目を通しているプロですので、アラムナイのレビューは効果的なレジュメ 作りの参考になります。日本の大手コンサルティング会社でご活躍中のアラムナイの方などもレジュメのレビューにご協力してくださっているので、電話でレ ビューをして貰いながら、コンサルティング会社の話などをお伺いできるのも、就職活動を進めていく上で大変参考になります。
6. 面接
実際のSummer Internship のInterviewは、Thanksgiving(感謝祭)の前後くらいから始まります。日本系の会社は10月、11月にMBA Tourに来られる際に、Discussionと称してPre Interviewをするところが多いようです。
Consulting系の会社は、Case Interview といい、ある問題を設定し、それに対する問題解決の思考過程をTestするInterviewを行います。多くの学生がPractice Groupを作り、Case Interviewの練習をしている姿がInterview Season 前に頻繁に見られるようになります。また、Finance系のPositionは、技術面のことも面接試験でみられ、Optionの公式を復習したり、 Wall Street誌のColumnを読んでいる姿などが目にとまるようになります。
大学のクラブに所属しインタビューに備えるのが一つの方法ですが、場数を踏む必要もあります。COCはMock Interviewという方法で、実際のインタビューの前にボランティアのアラムナイとインタビューを行う機会を提供してくれていますので、そういった機 会を積極的に利用するとよいでしょう。 USでの就職を希望する日本人にとって、Interviewは英語の面で不利ですが、経験に基づく鋭い視点は言葉の壁を超えた説得力があり、自信を持って Interviewに望むのがBestです。
7. CAREER FAIR
日本で就職を考えている学生にとって、企業への接触の大きなきっかけ作りとなるのはアメリカで開催されるキャリアフェアへの参加です。アメリカ人向けの Career Fair も年に数回以上開かれていますが、日本人にとっては日本企業、及び日本に支社のある外資系企業が多数参加する大規模なキャリアフェアが主なものになるで しょう。その中でも毎年10月末にボストンで開催される 「Boston Career Forum」が最大のハイライトです。日本でのサマーインターン及び就職を考えているTepperの日本人私費留学生のほとんどが、これらのフェアに参加し、実際にキャリアフェア で内定をおさえている人、またキャリアフェアをきっかけにして、その後の面接へと結び付けている人が数多くいます。 詳細は下記サイトを参照して下さい。
Boston Career Fair: http://www.careerforum.net
Asian MBA Career Fair: http://www.asianmba.org/
参加業種が多岐に渡り、一度に多くの企業を訪問できる点は非常に良い。ただ大学生が非常に多く参加しているので、どの企業がMBAの学生を採用しようとしているのか事前に調べて、面接の予約を入れておくとブースの前で列をつくって並ぶ必要がなく効率がよい。外資系金融機関(I-BANK、銀行)の大手企業 が数多く参加しているので、金融志望の人にとってはまたとない機会となると思う。ただ、戦略系といわれる大手コンサルティング会社はひとつも参加していな いので戦略系コンサル志望の人はこれらのFairへの参加以外の方法でアプローチをする必要ある。会計系、IT系コンサルは参加している。東芝、日本 IBM,トヨタ自動車等々の大手メーカーも数多く参加している。いままでMBAの採用実績が少ない企業(特に日本の企業)へアプローチする場合、入社後の 待遇、仕事内容などをよりきちんと確認する必要がある。
8. US MBA RECRUITING TOUR
10月の後半から11、12月にかけて、多くの外資系コンサルティング会社の日本法人が「MBA Tour」と称してアメリカの主要ビジネススクールにリクルーティングに訪れます。残念ながらピッツバーグまでやってくることは稀ですので、ニューヨークやフィラデルフィアまで出向いてイベントに参加することになります。その際に、フルタイムのポジションのみならず、サマーインターンを目的とした学生の為のインタ ビューも行われます。実際に採用の決定権のある方々がリクルーターとして来訪されるので、学生も非常に忙しいTepperでの学生生活の合間をぬって、説 明会及びインタビューの為の準備を万全にする必要があります。
会社説明会では日頃お会いすることのないTop Consultants の方々から非常に興味深い最新のBusinessの話をお聞きすることがで、それだけでも非常に有益な機会であり、私費、企業派遣に関わらず、多数の学生 も参加しての懇親会となることが多いです。
専門分野化が進んでいるアメリカでは多種多様なConsultantが存在し、それぞれが独自の強い分野を保持し、Consulting firmはMBAの一番の雇用先でもあります。又、ピッツバーグまで訪れないコンサルティング会社も、ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴといった、 ピッツバーグから比較的近い大都市で会社説明会を行うので、その説明会に積極的に参加することをお勧めします。これらの情報もCOCもしくは、直接、企業 から学生に案内があります。
9. SUMMER INTERNSHIP
アメリカでは学生のサマーインターンは一般的なことですが、日本ではあまりまだ馴染みがない場合も多く、サマーインターンとして学生を採用したものの、実 際どういう風に学生を扱ってよいのか分からないというケースも多々あります。きちんとMBA生のサマーインターンプログラムが組まれている企業、もしくは たとえ2~3ヶ月でもサマーインターン生にきちんとした機会を提供してくれる企業を吟味して選ぶ必要がありますので、サマーインターンのオファーを 貰った時点から、企業に仕事内容等、気になるところはきちんと確認しましょう。
さて、実際のサマーインターンですが、大抵は6月から8月頃にかけて行われます。夏の期間を効率的に使い、数社でサマーインターンを経験する人もいます が、大抵の人は1社で2~3ヶ月ほどじっくりとやります。サマーインターンは、自分が将来働きたいと思っている会社の仕事内容、及び職場環境を知る上で非 常に重要な機会であると同時に、企業側もフルタイムとして採用するかどうか学生を評価しているので、学生気分でなく、きちんと気をひきしめて望む必要があ ります。実際、サマーインターンをやった企業に、そのままフルタイムで就職をする人が非常に多いです。
サマーインターン経験者からの一言アドバイス:
職場環境は2ヶ月もいれば自然と分かってくるものです。私は常に、「もし将来ここで、社員として働くことになったら。。。」ということを頭の中で想定しな がら、仕事をするようにしていました。ただ、気をつけなければいけないのは、「MBAの学生なのだから、それなりの仕事をさせて欲しい」とか、あまりにも MBAを強調するのはさけた方がよいと思います。あくまでも、夏の短い期間に、忙しい中、MBA生の面倒をみてくれている企業側の方達への感謝の気持ちも 忘れないようにした方が良いでしょう。仕事は、日々の地道な努力の集積の結果として形になって現れてくるものだと思うので、何に対しても、真摯に努力する 姿勢を見せることは大事なことだと思います。
10. 就職活動(フルタイム)
1年生と2年生の間の夏休みにサマーインターンを経験した企業から、フルタイムの就職のオファーを貰い、そのまますぐに就職先を決めてしまう場合もありま すが、大抵の人は、2年になり前述のCareer Fairへの参加、アメリカにリクルーティングに訪れる企業の会社説明会(日系企業の場合)やインタビューに参加することで、様々な角度から自分自身が将 来やりたいことを再度、見つめ直したり、待遇面の比較を行ったりした上で、最終的な就職先を決定します。
就職先の最終的な決定に関しては、下記のようなことを行うとよいでしょう。
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自分なりに重要と思う項目(待遇面、職場環境、仕事内容等々)を細かく書きだし、マトリックス表を作り、 会社を比較検討し、自分にあったところを客観的にわりだす。
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オファーをもらっている企業の担当者に積極的にコンタクトを取り、疑問点、不明な点はクリアになるようにする。 質問に対して、リスポンスが早く、しっかりとしているかどうかも、企業の体質を知る上で非常に大きな参考になると思います。
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オファーを貰っている企業に在籍するアラムナイの人に積極的にコンタクトをとり、 職場の様子をきく。Tepperには各方面で活躍されているアラムナイの方が数多くいらっし ゃいます。
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同級生に相談する。Tepperには様々な業種から企業派遣で来ている日本人の同級生が 数多くいますので、話を聞くと よいでしょう。誰もが、大変親身に相談にのってくれます。 これもアットホームな雰囲気のTepperならではのものでしょう。
11. 就職活動を振り返って
サマーインターン、フルタイムの就職活動全般を通して感じたのは、「カーネギーメロンの知名度の高さ」と、「どこの企業も、カーネギー=数学というイメージをもっている」ということです。 日本では、カーネギーメロンの名前はあまり知られていないだろう、という予想に反し、企業のリクルーターの方達はカーネギーメロンに対して非常に高い評価 をしています。
現在、Business Weekのカーネギーメロンのランキングは15位ですが、数学、ITそしてオペレーションといった分野でのカーネギーの強みが、他のビジネススクールとの 差別化、企業に対しての好評価に繋がっているものと思われます。確かにカーネギーでは学生に対し、数量的な側面からの教育を徹底的に行うので、卒業時には かなり数量的な側面からの分析能力、問題解決能力が身につきます。特に日本の大学で、文科系出身の学生にとっては今までの自分のバックグラウンドにない新 たな部分を追加することになり、就職活動を行う上で、大きな強みとなることを感じました。
IT系、オペレーション系の仕事をしたいと思っている学生にとっては、Tepperで学んだことが非常に大きな付加価値になるのはもちろんのことですが、マー ケティングの分野でも、Tepperで学ぶ高度な回帰分析などの手法が企業でも大変役にたつので、Tepperならではの強みを生かした就職活動をするこ とが可能となると思います。
このようにTepperはユニークな強みを持っている為、就職活動を有利に進められることは事実ですが、Competitivenessも増していること は自覚しておかなくてはいけないと思います。また、大手コンサルティング会社などは、日本での学歴や職歴といった変えようのないバックグラウンドに非常に 重きをおいている、といった事実もあるので、そのあたりも念頭において就職活動を進めていく必要があります。
一番大切なのは、「自分が卒業後、何をやりたいのか。」であり、「自分の強みを生かせる就職先はどこなのか。」を見極めることではないかと思います。せっ かくMBAを取りにビジネススクールまで来たのだから、それなりの給料を貰えるところで働きたい、と考えがちですが、何が自分に向いているのか、をしっか りと見極めることこそが大切だと思います。
ビジネススクールに来たことは次への就職のステップとして大いに、利用すべきことですが、決して他の人の意見、考え方そして志向に、自分を合わせる必要は なく、そのような環境の中でも自分を客観的に見つめることこそが大切だと思います。MBAによってOptionが開かれるのは事実です。しかし、その OptionをExerciseするかかどうかはご自身の決断にかかっています。皆さんの投資なされた時間とお金を無駄にしないためにも、MBA期間とい うものは、本当の意味での絶え間ざる自己開発と将来設計の指針を見つける期間なのではないでしょうか。